和歌と俳句

蓬 よもぎ もぐさ

後拾遺集・恋 実方
かくとだにえやは伊吹のさしも草さしも知らじな燃ゆる思ひを

新古今集 好忠
荒小田の去年の古跡のふるよもぎ今は春べとほひこばえにけり

藤原頼氏
さしも草もゆるいぶきの山のはのいつともわかぬおもひなりけり

藤原公任
うゑおきし花なかりせばよもぎふを何につけてか思ひ出でまし

西行
蓬生はさまことなりや庭の面に烏扇のなぞ茂るらん

裏門の寺に逢着す蓬かな 蕪村


淺茅生の茅生の朝霜おきゆるみ蓬はもえぬ茅生の淺茅に


鬼怒川の篠の刈跡に柔かき蓬はつむも笹葉掻きよせ

籠の底の蓬しをれて出でにけり 虚子

籠の中の減りて萎れし蓬かな 虚子

小蓬は摘まで措きたる夕心 石鼎

摘みためて蓬ぬくさよ掌に 淡路女

ひざまづき蓬の中に摘みにけり 素十

こんもりと男山あり蓬摘 草城

汽車が通れば蓬つむ手をいつせいにあげ 山頭火

山上憶良ぞ棲みき蓬萌ゆ しづの女

蓬萌ゆ憶良旅人に亦君に しづの女

蓬摘む古址の詩を恋ひ人を恋ひ しづの女

万葉の男摘みけむ蓬萌ゆ しづの女

かへるさの日照雨に濡れし蓬籠 麦南

つみためて臼尻に撰る蓬かな 蛇笏

蓬生ふうね土温くく踏まれけり 蛇笏

俎の蓬を刻みたるみどり 誓子

蓬生や白毫光のいざよへる 耕衣

白毫光蓬の萌ゆる匂ひ差し 耕衣

雨あしのさだかに萌ゆるよもぎかな 蛇笏

雑念に痩せ行く顔や蓬道 耕衣

蓬摘む真似を男も恋ひつせり 耕衣

温泉煙に濡れて雪間の蓬草 風生

蓬まで蓬まで来て老いざらむ 耕衣

月越しの咳抜けにけり蓬餅 秋櫻子

蓬摘むいぶせきものの出でて候 静塔