和歌と俳句

土筆 つくし

つくつくし売るやはかまの町くだり 貞徳

まふくだがはかまよそふかつくづくし 芭蕉

見送りの先に立ちけりつくづくし 丈草

ひとつとはいはぬ筈なり土筆 千代女

つくつくしこじょらに寺の跡もあり 千代女

よしあしを地に並べけりつくつくし 千代女

陰はみな墨に染たるつくしかな 千代女

永き日を又つぎのばす土筆哉 千代女

つくづくしほうけては日の影ほそし 召波

道の記に仮の栞やつくづくし 几董

つくづくし人なき舟の流れけり 漱石

前垂の赤きに包む土筆かな 漱石

土筆物言はずすんすんとのびたり 漱石

仏を話す土筆の袴剥ぎながら 子規

土筆煮て飯くふ夜の台所 子規

家を出でて土筆摘むのも何年目 子規


むかし我がしばしば過ぎし大形の小松が下はつくしもえけり

茂吉
あづさゆみ春は寒けど日あたりのよろしき處つくづくし萌ゆ

海しらぬ子にこの土ありつくづくし 蛇笏

村へ戻らぬ誰彼れよ土筆 碧梧桐

赤羽根の篠藪の土筆時過ぎけり 碧梧桐

板の間に打ち開けた土筆あるじが坐る 碧梧桐

蝶の影二つとなりし土筆かな 石鼎

古草にうす日たゆたふ土筆かな 龍之介

芝ひたす水きよらかに土筆萌ゆ 蛇笏

膝つけばしめり居る草土筆摘む みどり女

影消える松の曇りや土筆摘む みどり女

摘む土筆二本添うたるあはれかな 石鼎

ゆくところなくて歩くや土筆 石鼎

枯芝にそびえ澄みたるつくしかな 櫻坡子

土筆野や阿蘇を要に左右の山 月二郎

土筆野やよろこぶ母につみあます かな女

まま事の飯もおさいも土筆かな 立子

人来ねば土筆長けゆくばかりかな 秋櫻子