内藤丈草
白粥の茶碗くまなし初日影
手の下の山を立きれ初かすみ
鋤初や鍬大将の門の前
片屋根の 梅ひらきけり烟出し
うぐひすや茶の木畑の朝月夜
背戸中はさえかへりけり田螺から
はるさめやむけ出たままの夜着の穴
鳶の輪の崩れて入るや山櫻
かげろふや墓より外に住ばかり
木枕の垢や伊吹に残る雪
片尻は岩にかけてり花むしろ
見送りの先に立ちけりつくづくし
蚊屋を出て又障子あり夏の月
夕立にはしり下るや竹の 蟻
谷風や青田をまはる庵の客
火をうてば軒に啼あふ雨蛙
時鳥啼や湖水のさゝ濁り
昼鐘や若竹そよぐ山づたひ
青雲や馬鍬やすむる昼の罌粟
雨に折れて麦穂にせばき径かな
病人と撞木に寝たる夜寒哉
鹿小屋の火にさし向くや庵の窓