和歌と俳句

若鮎

作者未詳
遠つ人松浦の川に若鮎釣る妹が手本を我れこそまかめ

作者未詳
若鮎釣る松浦の川の川なみの並にし思はば我れ恋ひめやも

作者未詳
春されば我家の里の川門には鮎子さ走る君待ちがてに

旅人
松浦川玉島の浦に若鮎釣る妹らを見らむひとの羨しさ


鮎の子の何を行衞に上り船 素堂

挑灯で若鮎を売る光かな 太祇

若鮎や水さへあれば岩の肩 太祇

汲鮎や青山高く水長し 召波

鮎くむや桜うぐゐも散花も 白雄

鮎汲や喜撰が嶽に雲かゝる 几董

花の散る拍子に急ぐ小鮎哉 一茶


子規
梅咲きぬ鮎上りぬ早く来と文書きおこす多摩の里人

若鮎の二手になりて上りけり 子規

若鮎の焦つてこそは上るらめ 漱石

晶子
春をおなじ 急瀬さばしる 若鮎の 釣緒の細う くれなゐならぬ

太田水穂
やまあれば渓あり渓あれば清き瀬に青き鮎子をさばしらす国

子が食うて若鮎惜しむ絹の骨 不死男