東風うけて川添ゆくや久しぶり
飲過た礼者のつらへ余寒哉
いかづちの後にも春のさむさ哉
思ひ出て薬湯たてる余寒哉
底た ゝく音や余寒の炭俵
望汐の遠くも響くかすみ哉
生海苔の波打際や東海寺
汲鮎や青山高く水長し
我影や心もとなき朧月
田薗の趣さらにおぼろ月
囀に独起出るや泊客
撫あげる昼寝の顔や春の風
白魚に余寒の海やいせ尾張
しら魚やつきまとはるゝ海の塵
西行の席さはがしき 蛙かな
はじめから声からしたる蛙かな
江の蛙生駒の雲のかゝる也
木づたひにいどみより来ぬ猫の夫
よく見れは乞る ゝ妻やこちの猫
沖に降小雨に入や春の鳫
北そらや霞て長し雁の道
古き戸に影うつり行燕かな
幢の仏間へ這入乙鳥哉
みづうみの浅瀬覚えつ蜆取
わかめ刈乙女に袖はなかりけり