初ふゆは曇とのみぞ障子越
はつ冬や空へ吹るゝ蜘のいと
しぐれする音聞初る山路かな
喘息に寝つかぬ声や小夜時雨
寺深く竹伐音や夕時雨
炉びらきやけふも灯下に老の日記
炉開や庭はあらしの樅を吹
冬の雨しぐれのあとを継夜哉
人声の小寺にあまる十夜かな
焼寺の早くも建て十夜哉
口切や寺へ呼れて竹の奥
蛭子講火鉢うれしとこぞりぬる
達磨忌や和尚いづちを尻目なる
茶の花にき ゞす鳴也谷の坊
は ゝ木 ゝの梢はこ ゝぞ帰花
咲出て心ならずや帰はな
羊煮て兵を労ふ霜夜哉
手してうつ鐘は石也寺の霜
あちこちとして居りたる落葉哉
冬偈ある寺にひかる ゝ大根かな
納豆汁比丘尼は比丘に劣りけり
憂ことを海月に語る海鼠哉
海鼠だ ゝみの饗応しのばし聚楽御所
煎蠣に土器とりし釆女かな
天文の博土ほのめく冬至かな
禅院の子も菓子貰ふ冬至哉
御火焼や積上し傍へ先よるな