和歌と俳句

黒柳召波

酒いたく呑ておかしや蕗のとう

梅生てねじめに折やふきのとう

初むまや足踏れたる申分ン

鴛衾に二日やいとかな

天人の肘に泪やねはん像

苦き手の其人ゆかし蕗のとう

大原木の芽すり行牛の頬

蕎麦打テば山葵ありやと夕かな

おもしろうわさびに咽ぶ泪かな

野の河やさはしてひたしもの

すゞめ子や書写の机のほとり迄

人の手に巣へ戻されつ雀の子

痩脚や畑打休ム日なたぼこ

はかなしや蝶の羽染る鳥の糞

屋根ふきのあがれば下るこてふ

雛の宴天井に雲画せん

曲水に病後の僧の苦吟哉

雛の宴五十の内侍酔れけり

雛店に彷彿として毬かな

風呂に見る早き泊りやも ゝの花

立よりて苣な荒しそ桃の花

島原に田舎の空や夕ひばり

耕に馬持る身のうれしさよ

十津河や耕人の山刀

泥澄てそこらに見ゆる田螺