陽炎や板とりて干す池のふね
踏つけし雪解にけり深山寺
はつ午やもの問初る一の橋
おそろしの掛物釘やねはん像
ちるなど ゝみへぬ若さやはつ桜
すみの江に高き櫓やおぼろ月
陽炎や筏木かはく岸の上
涅槃会や礼いひありく十五日
今日は身を船子にまかすかすみかな
若鮎や水さへあれば岩の肩
散てある椿にみやる木の間かな
蝶飛ぶや腹に子ありてねむる猫
うばかゝのさくらを覗く彼岸かな
帰る雁きかぬ夜がちに成にけり
吹はれてまたふる空や春の雪
はる雨や講釈すみて残る顔
三日月に木間出はらふ茶つみ哉
掃あへぬ桃よさくらよ雛の塵
紙びなや立そふべくは袖の上
二里程は鳶も出て舞ふ汐干哉
巣を守る燕のはらの白さかな
山吹や腕さし込で折にけり
船よせてさくらぬすむや月夜影