和歌と俳句

炭 太祇

半ば来て雨にぬれゐる花見

狂言は南無ともいはず壬生念仏

暮遅く日の這わたる畳かな

口たゝく夜の往来や花ざかり

しなへよく畳へ置や藤の花

遅日の光のせたり沖の浪

山路きてむかふ城下や凧の数

家内して覗からせし接木かな

永日やいまだ泊らぬ鶏の声

堀川の畠からたつ胡蝶かな

ひと真似のおぼつかなくも接穂

泊らばや遅き日の照る奥座敷

池のふねへ藤こぼるゝや此夕べ

採て筧にあらふひとりかな

凧白し長閑過ての夕ぐもり

諸声やうき藻にまとふむら蛙

京へきて息もつきあへず遅ざくら

はるの行音や夜すがら雨のあし

下戸の子の上戸と生れ春暮ぬ