簔を著て又薪割れり春小雨
潦に映りては消ゆ春の雪
泡影いくつ底に舞ひ居り水温む
根の髯の絡まる土や木の実植う
鳥の羽音頭上に消えぬ柳挿す
囀の小き羽音や障子外
朝の気の天はかゞみや山桜
山吹剪るや蓑毛逆立て崖に俯し
月の出や皆枝伸べて崖木の芽
蓑をきて曳きずり行く児畔薊
土くれや芋の芽しかと玉巻ける
めぐる泡絶えず顫へて芦の角
早春の流水早し猫柳
春寒し楼門聳ゆ藪の奥
夕陽にもゆる顔あけ畑打
鍬で泥右へ左へくわゐ掘る
慈姑掘る茎朽ち消えて絲程に
玄関へ奥の鶯の谺かな
蛙鳴くや月の田の面をさゞめかし
花人を鎮めの風雨到りけり
花篝焚く拵へや人の中
岩襞に咲いて水辺のつゝじかな
崖土の西日にこぼれ竹の秋
腰高く双手伸して芹つめり