西山泊雲
山吹剪る枝叢へ沈めとる
山吹や滝に向つて椅子床几
篁や小竹撓ませ藤の花
蕊の穢は何時なくなりし木の芽哉
道に沿ふて曲れる畝や豆の花
暖や土躍り出し貝割芽
春暁の啄木鳥きゝつ厠かな
春雨や嵩ばり萌えて八重葎
水温む泥に茜や菖蒲の根
波紋曲げてすゝむ目高や苗代水
焼山や嵩其まゝに歯朶の容
挿木細く杉菜の中に活きゐたり
鶯は篁くゞりぬけけらし
藪空に宵星淡し初蛙
積竹にかまれて雨の落椿
山裾の山葵畑やおちつばき
泥濘に飛石二つ落椿
折りよせて椿は濃ゆし山桜
山影をかぶりて川面花の冷
刺も柔かに枳殻の嫩葉かな
菜の花にしぶきて月の小雨かな
古根に浮きて虎杖の芽や真紅