晶子
君しるやわが七鉢の桜草春さめふれば庭に袖ふる
晶子
若き身のくたびれ心それに似るうす紅いろの桜草かな
晶子
病むわれのたよりなげにも歎く時かたへに慄ふ桜草かな
晶子
むかしの日姉とおもひし桜草いもうととして君と培ふ
晶子
朝夕かたはらに笑む桜草はたかたはらに泣くさくら草
晶子
桜草白きうすでのさかづきに薬をつぎて守るかたはら
晶子
文書けながなが書けと促しぬうすくれなゐのわが桜草
晶子
自らのものに見入りし顔のごと思ふ小き桜草かな
桜草の鉢またがねばならぬかな 虚子
蜂縁に萎れ葉垂れぬ桜草 風生
桜草の野に東京の遙かかな 風生
ありそめて道の辺につむ桜草 風生
紫になる花のあり桜草 立子
桜草かへりみすれば色さみし 淡路女
ちらつきし雪やみにけり桜草 花蓑
さみどりの野に畿ひして桜草 石鼎
風ややにすさぶ野に闌け桜草 石鼎
嬉々として野に妻等ある桜草 石鼎
桜草の鉢と置きある如露かな 杞陽
雨戸繰る眼のやりどころ桜草 彷徨子
桜草卓上のベルかろく打つ 占魚
鎌倉に風の荒るる日櫻草 万太郎
三日みぬ間の人の死や櫻草 万太郎
櫻草にはかに雪となりにけり 万太郎
町に住めば町に住んだ気櫻草 万太郎
夕東風や買はねど町に櫻草 汀女
少女等やいつもささやき櫻草 汀女
花の奥より蕾駈け出づ桜草 楸邨