紅梅の花花影も重ねずに
春水の油も塵も河の幅
黄塵の町のかなたに接木する
峡の昼春水はゆく身のほとり
姉妹思ひ同じく春火鉢
朝の坂夜の坂今宵卒業す
春の爐の障子一重の暗がりに
春雷や地階工事は地に沈み
思ひつくことたちまちに蝌蚪泳ぐ
あたたかに籬々を学校へ
恋猫に思ひのほかの月夜かな
花揺れてスヰートピーを束ね居る
一隅に遅日の厨つかさどり
母がりの裏木戸暗く春の星
誰ぞとなく春宵の墨濃にしつつ
足音も土に消え去り豆の花
風車止まりし色や春の夕
春夕べ木を挽く音の少しして
かへりみてなど藤棚のあるべしや
菜の花にばけつ叩いて子の合図
水栓に来てゐし水や花曇り
帰るべき細道見えて夕櫻
会ふ人ももとよりあらね春の月
春月や雨一日に田も濡れて
余花の雨残り少なく住み変り