うち霞み山頭の火ぞあきらかや
鶯や母をかたへにパン切れば
園暮春声を惜しまず夕鴉
梨の花ふるさと人の早寝かな
春眠に花ほどきけり玉椿
春眠の臥床そのまま海明り
来し片も日差たしかに豆の花
春の星たたむ露店の手順かな
さくら餅帰心そのまま甘かりし
子等さへも夕ぐれあはれ春しぐれ
野火走る消すことのみにかかはれる
青き踏み己おどろく帰心かな
ふるさともひとりの道ぞ青き踏む
春暁を覚めし己のありどころ
母と行く一筋道の花菜かな
おのおのにひとりの渚櫻貝
まつすぐに母を訪ふ道花曇
古きよき渡佛の話春夕べ
ひこばえの空を占めたる鳥語かな
蜃気楼われはわづかに句帳持ち
夕明り紅梅ひたと花揃へ
櫻咲くまづ真向の川風に
春水の白く抗ふ子等の脛
うたがひもなき春水の一平ら
おぼろ夜のさだまる灯影母の窓