和歌と俳句

暖か ぬくし

あたゝかやはきかへさせる馬の沓 万太郎

あたたかに灰をふるへる手もとかな 万太郎

あたたかや水輪ひまなき庇うら 久女

暖かき燈が廚より雪にさす 誓子

塀沿ひに村あたゝかや西大寺 爽雨

暖に笑ひこぼるゝ会釈かな 淡路女

あたたかやうすむらさきの玻璃の玉 彷徨子

水へ水へながれいる音あたたかし 山頭火

あたたかや荼毘堂灯る桃の昼 蛇笏

暖かや枯木の影が手をひろぐ 汀女

あたたかや指紋べたべた卓にゆく 彷徨子

石の上に子等寝て見せぬ暖かし 汀女

乳母車降りて転びぬ暖かき 茅舎

見下ろして犬に吠えられ暖かし 汀女

潮騒の遠のき浜のあたゝけき 占魚

暖かや鷄の餌に煮る魚のわた 占魚

あたたかにひそかにさしてくる日かな 万太郎

暖かや汀にのびし草の蔓 占魚

あたたかや雨の力を洋傘に感ず 林火

あたたかに籬々を学校へ 汀女

あたたかや人のねたみと聞きながし 万太郎

あたたかく牛にわが影あてて撫づ 林火

あたたかき夜やダイヤルにのぼす手も 汀女

暖かやいつも貧乏してをりて 立子

暖かやぬぎし草履のもえぎ色 立子

あたたかく牛にわが影あてて撫づ 林火

踏みはづす手乗り文鳥あたたかや 不死男

暖かし池水を掃く禿箒 風生

小波の小魚とも見えあたたかし みどり女

川上も川下もわかず暖かし みどり女

あたたかや起立助ける妻の肩 不死男