和歌と俳句

石楠花 しゃくなげ

石楠花に碁の音響く山深し 虚子

石楠花の紅ほのかなる微雨の中 蛇笏

石楠花に馬酔木の蜂のつく日かな石鼎

石楠花に手を触れしめず霧通ふ 亞浪

赤彦
石楠は寂しき花か谷あひの岩垣淵に影うつりつつ

赤彦
跣足にて谷川の石を踏みわたり石楠の花を折りにけるかな

赤彦
石楠の花にしまらく照れる日は向うの谷に入りにけるかな

赤彦
夕ぐるる谷川はたに石楠の花を折らむとするが幽けさ

茂吉
石楠は木曾奥谷ににほへどもそのくれなゐを人見つらむか

茂吉
ひかり染むやまふかくして咲きにけり石楠の花いはかがみのはな

石楠花の岩落つ水は淵をなす 辰之助

石楠花の邪魔な一枝を挿しかへぬ 立子

地獄道石楠掘りが下りて来し 烏頭子

石楠花や雲の巻舒を目のあたり 青畝

石楠花の山気澄まして暮れゆくか 亞浪

石楠花のまざまざと夢滅びぬる 亞浪

飴牛の石楠花がくれ来つつあり 青畝

石楠花を妻にも見よと持帰る 青畝

石楠花に聚碧園の樟落葉 蛇笏

石楠花に三千院の筧水 蛇笏

石楠の谷ありいまだ雪をしき 青邨

石楠花や谷をゆるがす朝の鐘 秋櫻子

石楠花を隠さう雲の急にして 青畝