蓮破る雨に力の加はりて
惨として破れたるこの城の蓮
萩刈れば昴俄に近づきし
突き出たる風除棒に菊仆れ
前置の悲し狐火物語
息白き子のひらめかす叡智かな
をちこちに夜紙漉とて灯るのみ
一つの炉行住坐臥にかはりなく
天邪鬼肘をつきをる霜夜かな
耕人に信夫の鐘の鳴りにけり
雪の上杉の実落ちぬとぶらはむ
みちのくの子の赤足袋の鞐見え
旅遠き南部馬コの耳袋
角巻をずらせばすこし乱れ髪
角巻やおばこおばこと吟み
奥の雪つまごの跡のふかぶかと
束稲の雪紫に見ゆるなり
雪のみちまんさくの黄が見えしこと
問ひ答へ訛つて雪目しばたたく
滝壺の怒涛の岩に漱ぐ
戸隠の霧のにほひも宜ならむ
戸隠の夏は短しさるをがせ
麻刈りて大きな水車まはるなり
夕焼の極みのはてに浅間見ゆ
北の星とびはじめたり親不知