海越えて白富士も来る瘤から芽
木になれぬ生身は歩く落葉一重
気ままな鳶冬雲垂れて沖に垂れ
老斑の月より落葉一枚着く
丸い寒月泣かんばかりにドラム打つ
ひつそりと遠火事あくびする赤子
太陽や農夫葱さげ漁夫章魚さげ
凧揚げて海の平らを一歩踏む
巨犬起ち人の胸押す寒い漁港
廃船に天水すこしそれも寒し
昼月も寒月恋の猫跳べり
赤い女の絶壁寒い海その底
明日までは転覆し置く寒暮のトロ
寒の入日へ金色の道海の上
細き靴脱ぎ砂こぼす寒の浜
富士白し童子童女の砂の城
寒雀仰ぐ日の声雲の声
寒雀おろおろ赤子火の泣声
髪長き女よ焼野匂い立つ
大寒の手紙「癒えたし子産みたし」
鉄路まで伊吹の雪の白厚し
深雪掻く家と家とをつながんと
一夜明け先ず京風の寒雀