個は全や落葉の道の大曲り
落葉して木々りんりんと新しや
夜の別れ木枯炎ゆる梢あり
ネロの業火石焼芋の竈に燃ゆ
地に立つ木離れず鳥も切れ凧も
枯広き拓地の声は岩起す
岩山の浅き地表に豆の花
餅焼けば谷間の鴉来よ来よと
鼻風邪や南面巨巌
死顔の寒季の富士は夜光る
素手で掻く岩海苔富士と共に白髪
夜の吹雪言葉のごとく耳に入る
寒柝に合せて生ける肌たたく
黒き月のせて三日月いつまで冬
これが最後の枯木の踊一つ星
落椿かかる地上に菓子のごとし
花咲く樹人の別れは背を向け合い
岩伝う干潟の独語誰も聞くな
うぐいすや死顔めきて巌に寝て
絶壁の氷柱夜となる底びかり
氷柱くわえ泣きの涙の犬はしる
寒のビール狐の落ちし顔で飲む
吹雪く野に立ち太き棒細き棒
首かしげおのれついばみ寒鴉