若くして梅雨のプールに伸び進む
黴の家振子がうごき人うごく
旅の梅雨クレーン濡れつつ動きつつ
田を植える無言や毒の雨しとしと
鮮血喀く子の口辺の鬚ぬぐう
眼を細め波郷狭庭の蠅叩く
犬にも死四方に四色の雲の峰
雷火野に立ち蟻共に羽根生える
失職の手足に羽蟻ねばりつく
艦に米旗西日の潮に下駄流れ
老いは黄色野太い胡瓜ぶらさがり
蚊帳の蚊も青がみなりもわが家族
岩に爪たてて空蝉泥まみれ
青萱につぶれず夫婦川渉る
炎天にもつこかつぎの彼が弟子
鰯雲小舟けなげの頭をもたげ
颱風前やわらかき子も砂遊び
垂れし手に灼け石掴み貨車を押す
秋富士消え中まで石の獅子坐る
富士高く海低し秋の蠅一匹
秋浜に描きし大魚へ潮さし来
太郎に血売りし君達秋の雨
父われを見んと麻酔のまぶたもたぐ