葭戸過ぎ几帳も過ぎて風通る
手花火の火は水にして迸る
無より咲く線香花火の火の華は
祭山車励ます幡の車輪紋
山脈に国を分たれ祭山車
奥宮へ登らずお釜まで登り
光太郎彫葉の上の雨蛙
鵜の潜る意志は曲げたる頚に見ゆ
緑眼で鵜は見る夜の水中を
口出して金魚水面の空気吸ふ
蘭鋳の臆病鰭を振りて逃ぐ
蛍谿足音の無き人が来る
蛍火の降り来て水に滴るよ
澄む水になほ存命のみづすまし
紫陽花の変化のあとの枯変化
日の国の向日葵のこの小輪よ
霊山の筍の皮弥黒し
磨崖仏三歩離れて巌の冷え
堂の冷え脳天にまで突き上がる
望の夜に着陸の燈の微々たる燈
明るきは明月の輪のぐるりのみ
颱風の浪の白馬が堰を超す
古戦場いまは籾殻散乱す
日和見の藁塚が立つ関ケ原
墓の頭に盆の供物を戴かす