和歌と俳句

志太野坡

五月雨や土人形のむかひ店

竹植や盆にのせたる茶碗酒

衣がへ十日早くば花ざかり

楽遁は宇治殿さへも渋団扇

夕すずみあぶなき石にのぼりけり

空あかり櫻の木間漆かき

ほたる見や風は茶嗅き懸作り

時もはや梅に塩するあつさ哉

手まはしに朝の間涼し夏念仏

郭公顔の出されぬ格子かな

かくれ家や木綿車にかんこ鳥

ある人はありて淋ししかんこ鳥

杉脂の手に煩はし蝉の声

あだし野や錦に眠る平家蟹

春夏を内外に拝む若葉かな

五月雨にぬれてやあかき花柘榴

くれなゐの暮のすがたや合歓の花

卯のはなやひと先澄て小田の水

灯をともす隣もなしや花卯木

紫陽花やそらに覚ぬはなの雨

さし肩に羽織の風や今年竹

住人の是てとけたり青すすき

銀屏に葵の花や社家の庭

夕立や紙漉隣麻つくる

麦の穂に烏賊の雫や市戻り

塚の銘千代にや千代に苔の花