和歌と俳句

原 石鼎

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滴りの音の間遠の井や真昼

滴りのはやきとおそきと見えかくれ

滴りの凝つては落つる白さ見よ

滴りの音のこだまの井の深さ

滴りの音顔に来る深井かな

滴りやのぞく深井の鴨足草

滴りのこだます井なれ梅の宿

滴りや釣瓶の水が井の歯朶へ

汗の人を尊くも見て通りけり

ひつじ草ちりなば水のそのままに

鳰がひく水脈睡蓮の花よりす

黄睡蓮鏡にもある池の面

杜影にまぎるるものやひつじ草

燈を消して横はりぬてよるの秋