青嵐緑へ落つる雲の影
森越えて次の森越す青嵐
厠出て面輪明るし青嵐
漏れ日騒ぐ大樹の幹や青嵐
広目屋の樹下に憩へる青嵐
広目屋の着物がゆゆし青嵐
入口の道見えて居る茂りかな
大木を茂りの中に見上げけり
崖筧ここにまたある茂かな
洒落稚子の彼のヘルメツト裏緑
金ほつれ古みづひきの夏の塵
夏風呂のくびすの垢がうすべりに
大なる葉の間より茄子の花
葉脈の濃紫より茄子の花
茄子の花茎をなぞへの色に咲く
初なりの茄子の艶よし花盛
ぬき草の生けるに露や茄子の花
暁の茄子の花より蟻のひげ
餌ふふむ親子雀に日照雨かな
鳶雲にむしあつき日をいくそたび
梅雨あけの日を感じつつ籘椅子に
連弾の琴に朝の月見草
ピアノより人下りたちぬ月見草
雲の峰を西と東や天瑠璃に
雲の峰夕やけて消えて暮れにけり