或る顔を鳴き捨て行くや時鳥
夏の人古池に足見られ死ぬ
寂しきは夏の海なり足二本
我が骨を思いつむれば葵也
茄子生るや未だ未来に非ざるも
恋鶯の喉七月の氷かな
たつぷりと皆遠く在り夏の暮
花茄子や寂しき茄子は慰まむ
炎天を鉄鉢と為す茄子の花
初茄子や人から遠い時を行く
白蓮や顔ならば穴開いて居る
掴み捕りしては置き行く夏雀
蓮を剪る人に海山残るかな
老幹に言問う夏は来たりけり
葵咲くや浮木に浮木言い寄るを
来し方に戻らんと在り夏蜜柑
行方みな唐草文や夏の暮
晩夏また道が尋ねて来るおきな
家族いま人形の如し茗荷汁
金色に茗荷汁澄む地球かな
茗荷汁如何なる道を外したる
また来むと夏は終りぬ須磨の浦
藻の花や畏まらねば宜しけれ
空蝉や迷あらたなる川も在る