そのいろに そみやしぬらん 山吹の 下行く水に さらす白ゆふ
水車 ひびく野川の 夕寒み ほろほろとちる 款冬の花
春駒の あゆみもおそし 賤が家の 垣根にさける 山ぶきの花
あやにくに 枝のみだれて 玉河の 浪をりかへる 岸の山吹
世の中に 風てふものの なかりせば 花のさかりに しくものはあらじ
日のもとに 櫻さきけり 今ぞしる わたくしならぬ 神の心を
言だまの さきはふ國の しるしとて 咲きやいでけん 山さくら花
我身だに しるよしなきも 花をしむ 心は何の こころなるらん
いかなれば 塵のうき世に つむ塵の はらふあとより 猶つもるらん
こぬ人を まつちの山の 郭公 君よりさきに おとづれにけり
時鳥 なきつと人の つたへきて 同じ初音を またもきく哉
郭公 おとづれにけり 窓おせば 月にゆらめく 垣の卯の花
名だにとふ 人こそなけれ 世の中に まがふかたなし ふじの高ねは
櫻花 さくと見えしは 夏山の 若葉がもとの 夢にぞありける
庭もせの 草かりかねつ 撫し子の 花やまじると 思ふばかりに
あへぎつつ 行きかふ人を よそにみて ここは涼しき 松の下風
涼船 かひのしづくに しるき哉 隅田河原に いづる月かげ
つづらをり いくへの峯を 渡りきて 雲間に低き 山もとの里
ふみわけて 上る山路の 雪ならで 駒のあがきに ゆらぐ卯の花