子規
隅田川 堤の櫻 さくころよ 花のにしきを きて帰るらん
子規
五月雨に 四方のながめも なかりけり 堤をゆする 隅田の川波
子規
なにしおふ すみ田の川の 川波の にごりて黒し さみだれの雨
子規
五月雨は いたくなふりそ 墨田川 水の濁らば いかがおよがん
子規
家々に ふすぶる蚊遣 なびきあひ 墨田の川に 夕けぶりたつ
子規
風そよぐ 隅田のあしの ふしの間に 夏の夜あけて 鶏やなくらん
子規
墨田川 かりのすまゐに 三たびまで みちたる月を ながめてしかな
子規
秩父てふ 峯より出づる 墨田川 かぎりしられぬ 戀もする哉
子規
いかにせん うき名を流す 墨田川 すみたる水も にごるならひを
一葉
咲く花もほのかにみえて隅田河いり江を暗し霞む月かな
子規
涼船 かひのしづくに しるき哉 隅田河原に いづる月かげ
白帆見ゆや黍のうしろの角田川 子規
一葉
すみだ河いく朝露にぬれつらん桜の色に袖やそまると
子規
隅田川流れを早みさし上る潮おしもどす五月雨の頃
子規
風起る隅田の川の上げ汐に夕波かづき泳ぐ子らはも
子規
何見ても昔ぞ忍ぶ中んづく隅田の夏の夕暮の月
子規
櫻さく隅田の堤人をしげみ白鬚までは行かで帰りぬ
子規
春の日の御空曇りて隅田川櫻の影はうつらざりけり
左千夫
花ちらふ隅田の河原の寺島を雨ふりくれて蛙鳴くなり
左千夫
打渡す墨田の河の秋の水吹くや朝風涼しかりけり