隅田川
晶子
隅田川その大橋を踏まましと霧降る朝は思はれぞする
夕東風や海の船ゐる隅田川 秋櫻子
茂吉
墨田川の ほとりに行くと いらだたしく 電車罷業の 街にいで来し
隅田川あかるき落穂沈めけり 楸邨
欄干によりて無月の隅田川 虚子
そぞろ濃き隅田川波五月場所 杞陽
煤けたる都鳥とぶ隅田川 虚子
茂吉
墨田川 彼岸ににぶき ものの音 amor fatiと 聞こえ来らむか
茂吉
隅田川の 川口近く たなびきて 行方も知らぬ 夕雲のいろ
花冷のなつかしきかな隅田川 立子
船のでるまでつかひあふ扇かな 万太郎
雲つひに月つつみえず夜半の月 万太郎
夏の夜の山ひろくなり狭くなり 万太郎
友ぶねにすでに酔ひどれ夏の月 万太郎
炎天の筏はかなし隅田川 波郷
隅田川見て刻待てり年わすれ 秋櫻子
都鳥降りぬ隅田の芥にも 青畝