和歌と俳句

正岡子規

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雨にくち 風にはやれし 柴の戸の 何を力に 叩く水鶏

むれあそぶ 足の下より 氷るらん 水鳥さわぐ 不忍のいけ

折りてこし 二あらの山の 薄紅葉 薄かれとしも われ思はなくに

谷深み そこともしらぬ 山鳥の 聲のこだまに ちる櫻かな

関もりの 招くやそれと きて見れば 尾花が末に 風渡る也

海原は 見渡す限り 山もなし いづこをさして 白帆ゆくらん

玉くしげ 箱根の空を 見てあれば ふた子の山に 雲たちのぼる

いさりする あまの妻子は やせにけり あはれうろくづよ 逃げずもあらなん

すきまもる 妙義おろしの 身にしみて 君がこぬ夜ぞ ふけまさりける

くれ竹の うき節しげき よの中を 菅の小笠に かくれてぞ行く