藺の花の上漕ぐ船や五月雨
田舎馬車乗りおくれたる螢かな
嵐山の闇に對する螢かな
唐人の文字正しき扇かな
寺を出る稚兒三人の日傘かな
涼しさや山を見飽きて蚊帳に入る
葛水に松風塵を落すなり
夏に籠る師に薪水の労をとる
市中の寺にかくるる一夏かな
或時は谷深く折る夏花かな
雨雲の離れぬ比枝や田植時
うち竝ぶ早乙女笠や湖を前
三軒家蚊帳つる時のほととぎす
山を出でて山に入る月や蚊帳の外
薫風や瀧の腹見る寺の縁
御車に牛かくる空やほととぎす
草山やこの面かの面の百合の花
古家にもの新らしき団扇かな
山寺にうき世の団扇見ゆるかな
先づ食うて先づ去る僧や心太
長橋を降りかくす雨や心太
大海のうしほはあれど旱かな
無用の書紙魚食ひあきて死ぬるらん
茄子汁主人好めば今日も今日も