蚊いぶしをもつて引越木蔭哉
よい程にたばこのしめる若葉哉
卯の花に布子の膝の光哉
五月雨や肩など打く火吹竹
灌仏の御指の先や暮の月
浜風に色の黒さよたん生仏
猫の子のほどく手つきや笹粽
清書の赤い直しや芥子の花
けし炭の庇にかはくわか葉哉
つり鐘の中よりわんと出る 蚊哉
夕立や大いさかいの天窓から
亰辺や人がひと見て夕すずみ
やれ打な 蝿が手をすり足をする
家なしがへらず口きく凉み哉
しなのぢや山の上にも田植笠
卯の花にけ上げの泥も盛り哉
一日や仕様事なしの更衣
茨垣や上手に明し犬の道
行々し大河はしんと流れけり
鼻先にちゑぶらさげて 扇かな
桑の木は坊主にされてかんこ鳥
米国や夜もつつ立雲の峰
隙人や蚊が出た出たと触歩く
手に足におきどころなき 暑哉
武士町や四角四面に水を蒔く