和歌と俳句

小林一茶

7 8 9 10 11 12 13 14 15 16

蚊いぶしをもつて引越木蔭哉

よい程にたばこのしめる若葉

卯の花に布子の膝の光哉

五月雨や肩など打く火吹竹

灌仏の御指の先や暮の月

浜風に色の黒さよたん生仏

猫の子のほどく手つきや笹粽

清書の赤い直しや芥子の花

けし炭の庇にかはくわか葉

つり鐘の中よりわんと出る

夕立や大いさかいの天窓から

亰辺や人がひと見て夕すずみ

やれ打な が手をすり足をする

家なしがへらず口きく凉み哉

しなのぢや山の上にも田植笠

卯の花にけ上げの泥も盛り哉

一日や仕様事なしの更衣

茨垣や上手に明し犬の道

行々し大河はしんと流れけり

鼻先にちゑぶらさげて かな

桑の木は坊主にされてかんこ鳥

米国や夜もつつ立雲の峰

隙人やが出た出たと触歩く

手に足におきどころなき

武士町や四角四面に水を蒔く