和歌と俳句

小林一茶

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蝿除の草を釣して又どこへ

小坊主や袂のなかの蝉の声

暑き夜をにらみ合たり鬼瓦

凉風の曲りくねつて来たりけり

魚どもは桶としらでや夕凉

包丁で鰻よりつつ夕すずみ

老たりないつかふしろへさす団扇

蕗の葉にぽんと穴明く

夜凉や足でかぞへるゑちご山

柿崎やしぶしぶ鳴のかんこ鳥

痩蛙まけるな一茶是に有

たのもしやてんつるてんの初袷

蚊やりから出現したりでかい月

湯上がりの尻べつたりせうぶ

行灯を虫の巡るや青あらし

里の子が犬に付たるさ苗

わんぱくや縛れながらよぶ

はつ袷にくまれ盛にはやくなれ

むらの の大寄合や軒の月

黒い穂もなまめき立り麦の秋

浅間から別て来るや小夕立

夕月やうにかせがせて茶碗酒

うす庇鳩に踏るる

暑き夜を唄で参るや善光寺

あこよ来よ転ぶも上手夕凉