和歌と俳句

善光寺

名月や西へ向へば善光寺 一茶

春風や牛に引かれて善光寺 一茶

暑き夜を唄で参るや善光寺 一茶

そば時やのしなのの善光寺 一茶

夕月や御煤の過し善光寺 一茶

浴るともあなたの煤ぞ善光寺 一茶

陽炎や手に下駄はいて善光寺 一茶

針売も善光寺みちの小春かな 蛇笏

甘酒や幼なおぼえの善光寺 万太郎

赤彦
古りにし佛の御堂にまゐり来れば杏は熟れぬ道のうへの木に

赤彦
善光寺山門下の家々に木垂る杏は黄に熟れにけり

赤彦
これの世に縁はなしと思ふ子の頻りにかなしみ佛のあかり

赤彦
おのが子の戒名もちて雪ふかき信濃の山の寺に来にけり

赤彦
のぼり行く坂のなかばより山門の雪の屋根見ゆ星空の下に

赤彦
善光寺山内さむし雪掃きて鳩あそびゐる長き鋪石道

赤彦
母を奉じて信濃の國の古寺に遠来ましつる命をぞ思ふ

赤彦
老ゆるもの子に従ひて尊けれ信濃の寺に遠く来ませり

赤彦
御佛のみ庭に花の散るひまも母に随ひて心惜しまむ

夏旅や俄か鐘きく善光寺 蛇笏

迢空
春深き信濃の寺に、思へども━━、かそけかりけり。父母のうへ

迢空
淡雪に、廻廊も 土も ひた濡るる昼を見にけり。信濃のみ寺に

そびゆるは甲斐善光寺葡萄園 蕪城

千年の秋の山裾善光寺 虚子