和歌と俳句

二上山

●奈良県北葛城郡と大阪府南河内郡の境にある山

大伯皇女
うつそみの人のある我れや明日よりは二上山を弟背と我れ見む

金葉集・夏 源親房
たまくしげ二上山の雲間よりいづれば明くる夏の夜の月

俊恵
わが恋は 二上山の もろ蔓 もろともにこそ かけまほしけれ

西行
雲覆ふ二上山の月影は心に澄むや見るにはあるらむ

八一
あまつかぜ吹きのすさみにふたがみのをさへみねさへかつらぎのくも

八一
ふたがみのてらのきざはし秋たけてやまのしづくにぬれぬ日ぞなき

八一
ふたがみのすその竹むらひるがへしかぜふきいでぬ塔のひさしに

八一
おにひとつ行者のひざをぬけいでゝあられうつらむふたがみの里

草城
二上天の眉かもしぐれけり

多佳子
牡丹照り二上山ここに裾をひく

多佳子
牡丹照り女峰男峰とかさなれる

八一
こもりゐてほとけおりけむふたがみのやまのをかべのかりいほしおもほゆ

林火
塔濡らす天二上をしぐれかな


●富山県高岡市と氷見市の境にある山。

史生土師道良
ぬばたまの夜は更けぬらし玉櫛笥二上山に月かたぶきぬ

家持
玉櫛笥二上山に鳴く鳥の声の恋しき時は来にけり

家持
二上のをてもこのもに網さして我が待つ鷹を夢に告げつも

家持
二上の峰の上の茂に隠りにしそのほととぎす待てど来鳴かず

普羅
牛にあらず二上山の眠るなり