和歌と俳句

秋篠

西行
秋篠や外山の里やしぐるらむ生駒の嶽に雲のかかれる

西行
初雪は冬のしるしに降りにけり秋篠山の杉の梢に


秋篠のほの白し鷹の鈴 支考

一葉
秋しのや外山のみねの朝霧にうすれて残る有明の月

八一
あきしののみてらをいでてかえりみるいこまがたけにひはおちんとす

八一
まばらなる竹のかなたのしろかべにしだれてあかきかきの實のかず

八一
たけむらにさしいるひかりもうらさびしほとけいまさぬあきしののさと

紫雲英咲く小田部に門は立てりけり 秋櫻子

草城
伎芸天在しまさねども春さりぬ

草城
渉りたる秋篠川の春の水

虚子
秋篠はげんげの畦に仏かな

立子
いく度も秋篠寺の春しぐれ

虚子
御仏は伎芸天女や寒牡丹

青邨
伎芸天ほの初冬の光格子より

青邨
龕灯の灯影はや御目見に

秋櫻子
端午開扉す怒りたまへる秘佛なり

秋櫻子
蝗飛ぶ田を残すなり門の前

秋櫻子
月を待つ供華のや伎芸天

楸邨
指の反りさむくかなしげ伎芸天