和歌と俳句

高浜虚子

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帽廂滞りつつ冬日あり

風さつと焚火の柱少し折れ

そのあたりほのとぬくしや寒牡丹

妹が居といふべかりける桐火鉢

海の日に少し焦げたる冬椿

口に袖あててゆく人冬めける

手慣たる木目を撫でて桐火鉢

踏石を伝ひさしたる冬日かな

鳩立つや銀杏落葉をふりかぶり

落葉吹く風に追はれて地下室に

の夜の灯うつる水溜

冬ぬくし日当りよくて手狭くて

ついついと黄の走りつつ枯芒

泉石に魂入りし時雨かな

浮き沈むの波紋の絶間なく

灯せば忽ち仏寒からず

枯蓮に横たふ暮色かな

の頭伸びしと見しが潜りけり

冬木切り倒しぬ犬は尾を垂れて

砕かるる冬木は鉈の思ふまま

金屏に畳の縁は流れゐる

一双の片方くらし金屏風

倉庫今船荷呑みをり雪もよひ

井戸端に仮に積み置く冬木かな

風さつと焚火の柱少し折れ