もてあそぶ火のうつくしき時雨かな 草城
時雨傘とどけこみあふ芝居かな 爽雨
しぐるるや杉の高枝のぎいと鳴る 鴻村
時雨るると仰ぎし空の烏かな立子
うしろすがたのしぐれてゆくか 山頭火
しぐれて反橋二つ渡る 山頭火
右近の橘の実のしぐるるや 山頭火
大樟も私も犬もしぐれつつ山頭火
松のお寺のしぐれとなつて 山頭火
遠く近く波音のしぐれてゐる山頭火
ふりかへる領巾振山はしぐれてゐる山頭火
青空に松の翠や夕時雨 石鼎
時雨るゝや落葉の上の音立てゝ 喜舟
小夜時雨生死の外に坐るかな 喜舟
万太郎
しぐるゝや水にしづめし皿小鉢
立子
大山の時々見ゆる時雨かな
草城
うちさやぐ時雨の竹の青さかな
草城
ひとり来て宇陀のしぐれに濡れにけり
汀女
ビルデイングそとは時雨るる荷舟かな
立子
時雨けるよき日なりけり宮詣
立子
時雨るるや旅の気儘の時なしに
普羅
時雨るゝや淵瀬変らぬ黒部川
淡路女
修験者と時雨やどりや大廂
万太郎
澤渡りの石ぬれそめし時雨かな
しづの女
旅衣時雨るるがまま干るがまま
青邨
時雨れつつ鋸山の歯に夕日
茅舎
時雨来と大木の幹砥の如し
茅舎
熊笹のささへり白し時雨ふる
茅舎
しぐるるや煙管つらぬく観世縒
茅舎
しぐるるや灯連ねて稲荷山
汀女
窓辺にて人のひろげし時雨傘
立子
汽車窓に和歌の浦あり時雨れをり
立子
時雨るるや小原女道を掃き急ぐ
しとしとしぐれる笹のさらさら 山頭火
草田男
街道や時雨いづかたよりとなく
草田男
時雨るるや好いた同士の同じ顔
草田男
時雨るるや烏賊より出づるトビカラス
時雨るゝや層楼を下りてわが庵へ 石鼎
秋櫻子
しぐれふるみちのくに大き佛あり
里びとは北しぐれとぞいひつ濡れ 多佳子
汀女
時雨るるや酒場灯影の反きあひ
誓子
もの書きて端近くゐればゆく時雨
しぐるるや畝傍は虹をかかげつつ 鳳作
時雨るると椎の葉越に仰ぎけり 鳳作