顔や十一月の眉をひき
よき人のふれてはじきぬ冬紅葉
冬もみぢたとへば霜の紅さかな
たそがれてさびしきものや冬紅葉
雨脚に濡るゝ石ある落葉かな
新しき stove かまへ十二月
座にすこし窓にすこしの冬日かな
耳たてし耳木菟顔のうすきかな
枯木より赫乎と尾ひろげ七面鳥
かりそめの帽着て立つや冬の庭
初雪の舞ひより窓の玻璃を擦る
いろいろに枯れて茎葉のすゝきかな
べゞの仔とくらす小家や枇杷の花
枇杷の花をなゝめや窓に英習字
富士の雪へむらがる枝や枇杷の花
牛擦りて剥げゐる幹の枇杷の花
どてら着ておごるひと日や霜曇
このごとくあること欲りし日向ぼこ
黄ばみきて薄き梧葉や冬の雨
年内の雪四つの日の夜半より
牡丹雪に池辺の鶴もめでたけれ
雪けむりして雪折のふと見えぬ
月のつむじ這ひけむり消ゆ雪の峰
光り降る雪あり月のビルデイング
物かげを降る雪ひらのしらべかな
やはらかに降る雪浮め夜の木々
地に近くはやみ雪ひら吹雪かな
夜のつむじ這ひゆく方や雪女郎
橇を絵に見ゐしがこゝに橇を見る
冬草に母のこゝろの影来る
冬の草眼に見あるけば限りなし
ぽりぽりと噛み出しけり追儺豆
かにかくにいたゞきおくや追儺豆
この歳は豆も熬らずに追儺祭
枯れ紅葉這ふ日を転じ眼を空へ
地に紅葉まことしやかの夕明り
雪ちらり寒紅梅の紅ほどに
初冬をせはしなに友よぶ鴉
花八手黄白けしと浅黄なると
小春とは楓こずゑに枯葉など
大いなる鯊飼てゐぬ枯葉宿
だぼ鯊もおこぜも買うて落葉宿
時雨るゝや層楼を下りてわが庵へ
せはしなに啼きし鴉も冬夕べ
七色の光芒に冬の日の出かな
黄金の旭日庵の冬木かな
光芒を下へ日の出や冬木越
拝める人尊さよ枯木宮
弓張の提灯くらし青葱ひく
小提灯葱畑照らし戻りけり
白葱と豆腐とたぎる土鍋かな
溜池をめぐりて葱の畑かな
葱畑の猫の眼燐や岨の闇
葱畑やまた峰の月むら雲に
葱光るところ白根の葉へうつり
炭荷馬あふりの紋の金はげて