和歌と俳句

銀杏落葉

晶子
金色のちひさき鳥のかたちして銀杏ちるなり夕日の岡に

碧梧桐
そゝけたる梢銀杏の落葉かな

碧梧桐
松立つて漁村の銀杏落葉かな

虚子
梢より銀杏落葉のさそひ落つ

憲吉
夕づく日眼に傷みあれ樹によれば公孫樹落葉の金降りやまず

憲吉
燃えあがる公孫樹落葉の金色におそれて足を踏み入れずけり

山頭火
銀杏またく散りしける地蔵たふとけれ

晶子
銀杏の木額と見ゆるところより光の如く四方に葉の散る

晶子
砂浜に波の寄るより休みなく落葉をおくる二本銀杏

蹴ちらしてまばゆき銀杏落葉かな 花蓑

茂吉
わが友のいのちをはりしこの村の公孫樹はすでに落ちつくしたり

茂吉
日もすがら夜すがら落ちし公孫樹葉はこがらし吹きてここにたまりぬ

茂吉
日もすがら落ちてたまれる公孫樹葉はさ夜ふけにして音もこそせね

茂吉
うつしみの吾が目のまへに黄いろなる公孫樹の落葉かぎり知られず

山頭火
大銀杏散りつくしたる大空

山頭火
お寺の大銀杏散るだけ散つた

鐘楼の古礎や散り銀杏 石鼎

立子
美しき銀杏落葉を仰ぐのみ

茅舎
銀杏散る童男童女ひざまづき

汀女
煤煙の今日うつくしや銀杏散る

立子
美しき銀杏落葉も道すがら

茂吉
わが窓のくもり硝子に黄に映えし銀杏葉もはや散り過ぎにけり

茂吉
おほどかに幾日ばかりかわが窓に公孫樹映りて今は散りつも

茂吉
わが庭の一木の公孫樹残りなく落葉しせれば心しづけし

茂吉
いくひらの公孫樹の落葉かさなりてここにしあるかたどきも知らず

虚子
母と子の拾ふ手許に銀杏散る

汀女
走り去る毬さびしけれ銀杏散る

たかし
銀杏散りひろごる中に藪もあり

風生
銀杏落葉街よごれ人の顔風邪よごれ

友二
大わらわ散りて銀杏や耿と敷く

虚子
鳩立つや銀杏落葉をふりかぶり

青邨
銀杏散るまつただ中に法科あり

朝ばかり日のさす寺の銀杏散る 占魚

銀杏ちる兄が駈ければ妹も 

立子
あそぶ子のいつも同じや銀杏散る

林火
銀杏聳ゆおのが落葉を見下して

青畝
銀杏ちる音に耳立て畳刺す

万太郎
あはれ一夜ぞいてふのおちば地を埋め

万太郎
地にしけるいてふおちばの日をえたる

青畝
日あたれば黄を撒きあげて銀杏散る

青畝
金の箔み空を散らすいてふかな

青畝
ふぶきゆくいてふの金の光かな

汀女
ゆかりとぞ誰にいふべき銀杏散る