水はけのわるきこのごろ桐の花
御所風の大本山や椎の花
嵯峨御所の橘かをる泊りかな
風塵のアカシヤ飛ぶよ房のまま
渦潮のとどろく島に蘇鉄咲く
領巾振りし昔の浜の草桔梗
朝夕立観世音寺の鐘は今
風吹きて鵜篝の火のさかだてる
北浜は沸けど橋上秋の風
しづかなる雨漏なれど大野分
曼珠沙華町へと畷塗りつぶし
那智詣かなひて滝の写真撮る
寝待月雲より落ちて照らしけり
ちりもみぢ帚を客に笑み渡す
伐竹をまたぎかねゐる尼と逢ふ
卵黄のごとく日にあり冬の雲
不自由をしのぎきたりし炭をつぐ
銀杏ちる音に耳立て畳刺す
ならべゆき心ときめく歌留多かな
たらちめの手ずれの歌留多読みにけり
天の原和田の原より初鴉
矢の中に矢投げて厄を払ひけり
雨だれにおでんのゆげのすぐもつれ