わだなかに春曙のすめらみくに
花南瓜石の台にのりそひき
昼顔の花の中にも砂多少
茨の実をひつぱつて鵯翻り
町は冬陸軍墓地をいただけり
冬ごもり顧みすれば故人がち
早春の鳶を放ちて宝寺
雪嶺をたたむ山山うづくまり
おほばこの双葉帚に飛びがたし
伐口の大円盤や山笑ふ
苔につくまでの大きな春の雪
芽柳に焦都やはらぎそめむとす
彼処焼け此処のこる街卒業す
御忌の鉦はじめの間まちまちに
満山のつぼみのままのつつじかな
苗代より次の苗代に家五軒
塗畦の照る奥能勢となりにけり
柿の芽を霜が食ひしと山語り
春水に膝あてがひて伏し濯ぎ
襖除り杜鵑花あかりに圧されけり
蛇の衣ほころびもなく落ちにけり
深廂山の噴井は注連を張り
裸の子蘭亭帖の字を習ふ
山猿をのせてゆらめく藤の花
藤づるのからまる下の流急
石垣に大きな名前鮎の宿