松籟に日はかくれたる落葉かな
ひらひらと金箔はげて大熊手
梟淋し人の如くに瞑る時
青天に飼はれて淋し木菟の耳
日の輪かなしたかぶり怒るづくの羽に
河豚の歯の三角にらむ空深し
ちぎれ飛ぶ焔に焚火寒さあり
焚火中俄に燃えて枝一つ
焚火の火やがてうつらずなりし水
髪に浮く雪片一つ夜の暖炉
襟巻に一片浮ける朱唇かな
肩へはねて襟巻の端日に長し
冬雨に動く色見し朽葉かな
夕鐘のわなゝきにさめて雪の畦
蘭にとまりし雪片動き消ゆる哉
戸に出でし人に日南や裾野雪
棕梠の葉の雪よりたちて日の吹雪
くるゝ山の大雪に伏す木々の念
枳殻垣上溜りして夕霰
寒む霰雲と天との虚空より
菊の紅かすかに月の霰かな
泊船の朱見えて小春松のひま
月の面の穢の鮮かに落葉かな
時雨るるや空の青さをとぶ鴉
太陽に黒点出来し蕪かな