山の襞争ひ落つる枯木かな
鴛鴦に古木はげしく枯れにけり
鴛鴦に枯木月夜のありにけり
短日の日色に月をかゝげけり
短日の梢微塵にくれにけり
磯巌にまた日かげりぬ冬の雁
水はなれ飛ぶとき濃さや鴨の足
冬嶺の頂き潰えて翠濃さ
大霜や壁に乾ける馬の沓
暮れて落つ雪片まこと白かりし
山茶花の大方散りて咲けるかな
雨戸樋の針金とけて山茶花へ
横枝を落葉降り来る大樹かな
土もろく鍬に反りし落葉かな
藪溝に霰たまりし落葉かな
畦の木に蔓枯れ細る小春かな
大根今悉くなき畑かな
夕空の浅黄に松の霰かな
鴨浮くや色濃き波にかくれつゝ
橋くゞる舷長し大根船
枯れてなほたゝかふ枝や月無惨
日にとくる霜の白さや石蕗の面
雪空や雪積むまゝの湖畔
暮の雪重なり着ける塀の面
枯枝にだんびら雪の見ゆるかな
朴の雪つみきはまつてくづれけり
一茎の蘆に消え入る氷魚かな
鴨なくや雪深々と月の橋
藁屋根の厚きひさしや時雨やむ
時雨るゝや又柿の葉の土に散る
短日の月をかゝげし山家かな
短日の水汲みに出ぬま一桶
神楽師の獅子かつぎゆく枯野かな
とりへらす薪に心や冬至荒
雪の下駄縁に脱ぎある氷柱かな
炬燵出でゝ氷柱の縁に立ちにけり
早梅に羽光らせぬ山鴉
立つ霜と夕焼けてゐる水仙花
ころげある鉢の後ろの水仙花
山茶花や空少しある軒の下
時雨るるや蒲団の人の動きし如し
年々や風よけの外の葱畑
水鳥の今日一日なき冬曇
電車下りしはわれひとりなり冬曇
廂より高き堤や十二月
短日やいつまで澄みてくるる空
短日や或時ふとき我心
鴛鴦浮くや雌やゝに雄に隠れがち
岩かげを流れ出て鴛鴦美しき
炭割るや陸をよそなる鴛鴦二つ