和歌と俳句

原 石鼎

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追儺ふときにも見えし嶺の星

山国の闇恐ろしき追儺かな

犬呼ぶに口笛かすれ小春かな

揚げ船の濡れひかり居る小春かな

浜草に雀むれゐる小春かな

島がくる帆に色強し小春

鰤網を干すに眼こはし浜烏

初鰤にこの灘町の人気かな

磯鷲はかならず巌にとまりけり

短日の磯を汚しし烏賊の墨

あさましく柚子落ちてあり冬の雨

想ひ見るや我屍にふるみぞれ

煤掃や日の当りたる庭の松

橋に出て屏風掃きけり煤払ひ

節分の高張立ちぬ大鳥居

漁夫町はめ戸にそぼつ冬の雨

みあかしを手燭に借りる寒さかな

や提灯もちて田舎人

青空へ荒れ居る浪や冬の雁

日かげりて帆消えし海や鷲翔る

汐木拾へば磯べに冬日したたれり

炉開いて暫し日あるや窓の海

牡蠣船に枯木の影や月の下

病める母の障子の外の枯野かな

炭部屋の中から見えし枯野かな

冬の海に雲やけ見ゆれ懐かしき