和歌と俳句

種田山頭火

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松虫鈴虫水の音夜もすがらたえず

畔松むざと倒されて稲のそよぎかな

泳ぎ騒ぎ去にしより雲の峰くづる

雲うつつなく山のまろさを青葉深し

日は落つれ草踏みゆけば月草の咲く

湛ふ水に沈丁花醒めて香を吐けり

草の中の石のつめたさ黒とんぼ澄む

地虫いつしか鳴きやみて鶏頭燃ゆるなり

煙管たたけば寂しき音と火鉢撫づ

眠らざりし霜旦我の弱き知る

思ひふと沈みゆく足袋も揺るる影

稀な湯心地肌撫でて寒の空仰ぐ

傾ける陽の前を群れて飛ぶ蜻蛉

稲は刈られて黒土のほとり踏みたけれ

列なして読む児等に若葉濃けれ

松虫よ鈴虫よ闇の深さかな

レール果てなく百舌鳥のみが鋭し