西行
時鳥きく折にこそ夏山の青葉は花におとらざりけれ
素堂
又是より青葉一見となりにけり
一茶
梅の木の心しづかに青葉かな
良寛
我が庵は森の下庵いつとても青葉のみこそ生ひしげりつつ
良寛
待たれにし花は何時しか散りすぎて山は青葉になりにけるかな
鎌倉は村とよばるゝ青葉かな 子規
痩馬もいさむ朝日の青葉かな 子規
左千夫
八十国のつかへまつりて作らへる鹿苑院は青葉せりけり
茂吉
いとまなき 吾なればいま 時の間の 青葉の揺れも 見むとしおもふ
憲吉
青葉ふかく人にかくれて吾がいきを永世につけば悲しきろかも
憲吉
夕べ野はかすかなる世にそこここと青葉の息のたち嘆くらむ
憲吉
夕べ雨晴れし名残を傘のまま吾がふかく入る青葉みちかな
宮沢賢治
中尊寺青葉に曇る夕暮のそらふるはして青き鐘鳴る
水一荷渡御にそなへし青葉かな 蛇笏
左千夫
九十九里の波の遠鳴り日の光り青葉の村を一人来にけり
樟欅御門頼母しき青葉かな 鬼城
青葉して錠のさびつく御廟かな 鬼城
青葉透いて裏映ゆる瓦斯のみづみづし 山頭火
雲うつつなく山のまろさを青葉深し 山頭火
赤彦
小夜ふけて青葉の空の雨もよひ光り乏しく月傾きぬ
赤彦
月くもる青葉の道は寂しきか唄をうたひて通る人あり
茂吉
真日おちていまだあかるき墓はらに青葉のにほひを我はかなしむ
茂吉
うちわたす墓はら中にとりよろふ葉のしづけさ朝のひかりに
牧水
さやさやに その音ながれつ 窓ごしに 見上ぐれば青葉 滝とそよげり
牧水
置かれたる 酒杯のさけにも こまごまと 静けき青葉 うつりたるかな
牧水
ひとしきり 風に吹かれて しなえたる あを葉の蔭の ひるすぎの窓
一ところ風見ゆる山の青葉かな 亞浪
夜空濃くゆるがぬ青葉しづくしてけり 山頭火
朝の雨青葉も濡れつ私も濡れつ 山頭火
児の顔に又疵ふえし青葉かな 橙黄子
山川や青葉の淵を渡し舟 秋櫻子
駅高く青葉の峡となりにけり 秋櫻子
乳の壜二本並んで青葉かな 鴻村
青葉に寝ころぶや死を感じつつ 山頭火