和歌と俳句

山口素堂

三日月の隙にてす ゝむ哀かな

旅の旅つゐに宗祇の時雨

又是より青葉一見となりにけり

朝かほハ其年の垣に盛哉

はなれじと昨日の菊を枕かな

山窓や江戸を見ひらく霧の底

下く ゞる心の栗鼠やぶどう棚

さびたりともこそまさめた ゞの石

蔕おちの柿のおときく深山哉

旅ごろも馬蹄のちりや菊がさね

あさがほの星と一度にめでたけれ

魂やどし凩に咲梨の花

照日にハ蝸牛もきしる柳哉

日照年二百十日の風を待ツ

白河や若きもか ゞむ初月夜

人待や木葉かた寄る風の道

晴る夜の江戸より近し霧の不二

あはれさやしぐるゝ比の山家集

水甕を汲干すまでに月澄て

青海や太鼓ゆるまる春の聲

茶の羽織おもへば主に穐もなし

御手洗や半バ流る ゝ年わすれ

橋立や景過もせず のひま

ながく釜に落来る筧かな

立されよ今は都に帰る厂