玉子酒ありなしの火に作るとて
茶の花や聞けば嘆きはあるものぞ
極月の毛糸の嵩を編みはじむ
千鳥鳴く海の暮色は唐突に
告ぐべくもなし一帯の枯芭蕉
思ひ捨つ一片に京のしぐれかな
寒禽の叫びて人のけはひあり
寒の水ふくみぬたのみある如し
冬の雨なほ母たのむ夢に覚め
もがり笛話とぎるる恐れけり
枯れ切つて菊美しや一葉忌
枯蔓の引きのこりたる虚空かな
落葉風何たしかむと出でし身ぞ
寒菊やすでにわれらは夜にまぎれ
近松忌思ひもよらぬ町に住み
冬帽子大人の話ききたき子
霜白し己れひそかに制すもの
しぐるるやなど白波は誘ふなる
ゆかりとぞ誰にいふべき銀杏散る
冬に入る暮しさへぎる白襖
湖渡る冬山の意を近々と