時雨るるや電話待つよりすべもなく
短日や折から降るに傘連らね
短日のさて指示標や矢印や
飢じさを母に告げに来日短か
叱られてゐる猫ゆゑに爐邊をかし
昼餉置く落葉は広くみな清し
水鳥の身近にあればあはれさよ
あたりもの無くなり立てり大冬木
おのおのや子をいたはりて冬木道
返り花しつつ時雨のくりかへす
人影のあとの供華清し枇杷の花
年忘れひそかに祀る神おはし
白菜と夜目に選びた年用意
人波のことに愉しや日記買ふ
師走人おおと焚火を避け過ぎぬ
いささかの酒肴かこへる障子かな
凍蝶を見し身の如くかへりみる
水あればある夕焼や雪の原
枯蓮の水面やうやく平らなり
蓮枯れて水鳥唯唯と通すなり
公園の落葉の椅子の隣同士
山茶花に移らむ心ひそと居り
小夜時雨子等は己の臥床のぶ
羽子板はまだ父の手に紙袋