水漬きつつ木賊は青し冬の雨
往を急ぎ帰りを急ぎ都鳥
襟巻にふつつりつぐむ思ひかな
月の軒引き寄せてある炭俵
冬枯の裾ひく山の裾に母
橋向うがたと淋しく都鳥
満山の白山茶花に夕時雨
江覆ふ冬夕焼に旧租界
ふたたびす香港夜景落葉坂
母ありと知るしづけさの冬夕焼
風音のまた追つかけて麦は芽に
冬服に海の入日の柔かや
島裏のさびしさ告ぐよ日向ぼこ
毛糸玉遠きはさびし引きつ編む
暮靄濃し早や枯菊にのみならず
餅搗のやとはれ衆の老いにけり
句短冊切ればさだまる冬灯かな
寒鴉真顔とつとと田畦行く
水仙や更に一句を成さんとし
霜白しすでに働く身のこなし
ふところ手こころ見られしごとほどく
炭俵闇に馴れよとある如し
冬山も町の広さも新居より
東京駅暗きは空車年迫る
風邪の子が留守あづかるといひくれし